質問票の前に、誰に何を
伝える取材かを決める
「次の会社紹介には、社長インタビューを載せよう」。そう決まって質問を集めると、理念、創業、強み、将来像と、聞きたいことが次々に増えます。けれど、全部を一度に聞くと、どの回答も短い説明で終わりがちです。先に、読み終えた人が一つ何を理解できればよいかを決めましょう。
取引先向けなら、どんな経験をもとに仕事を判断する代表なのか。採用向けなら、実際に意見が分かれたとき、どのように話し合うのか。協業向けなら、代表本人がどの領域を担い、誰と組みたいのか。同じ社長への取材でも、読者によって深く聞く場面が変わります。
本記事は、自社の代表を取材する広報担当者や、一人で発信材料を整理する経営者向けの質問設計です。取材先へ提出する短い紹介文を先に整えたい場合は取材用プロフィールの作成ガイドを参照してください。完成した記事と本人の情報をつなぐ使い方は、経営者・創業者向けの活用シーンで確認できます。
- 読み手と目的を一文で書き、特に聞きたい問いを三つ程度選ぶ。
- 会社サイトや既存のプロフィールで分かる事実は先に整理し、取材では確認と背景の質問に時間を使う。
- 掲載先、使う写真、録音の有無、原稿確認の進め方を事前に共有する。
- 顧客名・社員名・未発表の計画など、公開範囲を確認したい話題を把握する。
社長インタビューの質問12例|
目的に合わせて選ぶ
以下は本記事で作成した質問例です。12問を順番に消化する必要はありません。まず現在の仕事を確認し、記事の目的に近い場面を一つ選び、その判断の背景を聞きます。回答の中に気になる行動が出てきたら、予定した次の質問より、その続きを優先して構いません。
取引先向けなら2・5・8、採用向けなら4・7・10、協業向けなら3・9・11が入口になります。同じ問いでも、「チームで決めたこと」と「代表本人がしたこと」を分けて聞くと、会社の紹介と人物の紹介の両方に使える材料が残ります。
現在の仕事と本人の担当を聞く4問
1.現在の事業で、誰のどんな困りごとに取り組んでいますか。 2.その困りごとを具体的に知った、最近の場面を教えてください。 3.事業の中で、ご自身が直接担当している仕事は何ですか。 4.ここ最近、社員や仲間と時間をかけて話し合ったテーマは何ですか。
判断の背景と実際の行動を聞く4問
5.その場面では、どのような選択肢がありましたか。 6.最後にその方法を選んだのは、何を優先したからですか。 7.違う意見が出たとき、何を確かめて話を進めましたか。 8.決めた後、ご自身は何を行い、現場では何が起きましたか。
現在地と今後の方針を聞く4問
9.今の取り組みで、まだ解けていない課題は何ですか。 10.次も続けたい仕事の進め方と、見直したい進め方は何ですか。 11.これから試すことは何で、今はどの段階ですか。 12.今回の読者に、まず知っておいてほしいことは何ですか。
「現場を大切にしています」から、
一場面へ掘り下げる
代表が「現場を大切にしています」と答えたら、すぐに次の理念を聞かず、思い出せる場面を尋ねます。「どのように大切にしていますか」でも話が広いままなら、「最近、それを意識して対応した仕事はありますか」と時点を絞りましょう。
次の会話は、聞き方の練習用に作った架空の例です。代表をよく見せる答えへ誘導するのではなく、選択肢と実際の行動を確かめています。「それで大成功したのですね」と結論を先に置かないことが大切です。
回答を掘り下げる会話例
代表:現場の方が使いやすいことを大切にしています。 聞き手:最近、その考えで進め方を変えた場面はありますか。 代表:新しい管理方法を提案したとき、入力の負担が大きいと言われました。 聞き手:そのとき、どんな選択肢がありましたか。 代表:予定どおり全部変えるか、一部の業務で試すかです。まず一部で試しました。 聞き手:試す際に、ご自身は何を担当しましたか。 代表:担当者への聞き取りと、残す入力項目の整理です。 聞き手:試した後、何が分かりましたか。まだ確認中のことはありますか。
取材メモは、事実・考え・予定・
未確認に分ける
話を聞いた直後は、印象的な言葉と確認できた事実が混ざっています。文章にする前に、いつ何を担当したかという事実、本人の考え、これからの予定、まだ確かめていないことを分けましょう。未確認の欄を残すと、読みやすくするために想像で穴を埋めるのを防げます。
先ほどの会話から確認できるのは、代表が聞き取りと入力項目の整理を担当したことです。作業時間が短くなったことや、導入が成功したことまでは分かりません。成果として載せたいなら、何と何を比べた結果か、公開できる記録があるかを別に確かめます。
横にスクロールして表の続きを確認できます
| メモの種類 | 今回の会話から残す内容 | 原稿にする前の確認 |
|---|---|---|
| 事実 | 本人が聞き取りと入力項目の整理を担当 | 実施した時期と公開できる範囲 |
| 考え | 現場が使い続けられる進め方を重視 | 要約が本人の意図と合っているか |
| 予定 | この会話では、今後の計画はまだ聞けていない | 追加で質問し、実施済みの内容と区別 |
| 未確認 | 試行後の結果、顧客名の掲載可否 | 確認先と原稿に反映する期限 |
取材記事と代表プロフィールに、
材料を振り分ける
取材記事では、場面、迷い、選択、その後の変化という流れを残せます。一方、代表プロフィールには、氏名、現在の所属と役割、関係する経歴、専門領域など、別の場面でも確認したい人物情報を置きます。同じ取材から作れても、全文を両方に載せる必要はありません。
例えば取材記事に管理方法を選んだ経緯を書き、プロフィールでは「業務支援の企画を担当。現場の聞き取りと業務手順の整理に取り組む」と要約します。これは前の会話を基にした編集例なので、実際には現在の担当として正しいかを本人に確認してから使います。記事の紹介には、取材テーマと公開時期を添えます。
原稿の組み立ては代表者プロフィールの書き方で確認できます。事業への考えを一人称で伝える文章にするなら代表挨拶の書き方、起業までの経緯を掘り下げるなら創業ストーリーの書き方へ進んでください。
ProfSignalでは、代表本人の経歴や専門領域と、会社サイト・取材記事・SNSなどを一つのプロフィールから案内できます。会社の公式な発表は会社サイトに残し、人物について確認する入口を補います。
社長インタビューの準備で
よくある質問
質問は事前に全部渡したほうがよいですか?
目的と主なテーマ、確認したい事実を共有すると準備をしやすくなります。当日は回答の続きを聞くことも伝え、暗記した答えだけで進める形に固定しないようにします。
代表が短い答えしか話さないときはどうしますか?
広い問いを、最近の一つの仕事に絞ります。「そのとき誰と話しましたか」「最初に何をしましたか」のように、思い出せる行動から尋ねます。話していない内容を聞き手の想像で補わないでください。
失敗や課題も聞いたほうがよいですか?
記事の目的に必要なら、公開できる範囲で聞きます。困難な話を必ず入れるのではなく、どんな選択をし、現在どう取り組んでいるかを理解するために扱います。第三者に影響する内容は掲載範囲を確認しましょう。
一人で会社を運営していても使えますか?
質問に音声や箇条書きで答え、後から事実と考えを分ける方法があります。自分をよく見せる評価語が増えたら、実際に担当したことと確認できる結果へ戻して読み直してください。
取材後は、確認が必要なことを
残さず整理する
質問票が埋まったかより、読み手の疑問に答えられる材料があるかを見直しましょう。代表の抽象的な一言が、実際に選び、行動した一場面につながっていれば、その取材には人物を知る手がかりが残っています。
- 記事の目的に関係する場面と判断が一つ以上ある。
- 会社やチーム全体の成果と、代表本人の担当を分けた。
- 時期・役職・固有名詞・数値を確認し、未確認事項の扱いを決めた。
- 事実・本人の考え・今後の予定が混ざっていない。
- 発言の要約と公開範囲を本人に確認する準備ができた。
- 代表プロフィールに残す経歴と、詳しい取材記事への案内を選んだ。